昨今、あらゆる分野でAIの活用が進んでいます。新たにAIシステムの導入を検討しており、AI開発にどのくらいの費用がかかるのか知りたいという方も多いのではないでしょうか。
AI開発を行うにあたって、開発会社に依頼する際の費用相場を知っておくと、スムーズにプロジェクトを進めることができます。
本記事では、AI開発にかかる費用相場や予算を抑えるポイントについてわかりやすく解説していきます。
目次
AI開発にかかる費用
AI開発は、一般的に7つの工程に分かれます。費用は工程ごとに異なるため、それぞれの工程の概要と費用相場について説明します。
ヒアリング
AI開発を依頼するにあたって、まずは開発会社からのヒアリングが行われます。
ヒアリングでは、開発目的やAIによって実現したいこと、解決したい課題、予算感などを開発会社に伝えます。開発会社からは、自社の技術やできること、概算の見積もりなどの情報が提供されます。
ヒアリングにかかる費用は、基本的には無料です。ヒアリングではどのようなAIを開発するかという点と、概算費用を開発会社とすり合わせることがゴールとなります。
コンサルティング・要件定義
ヒアリングでAI開発の概要が決まったら、コンサルティング・要件定義のフェーズに進みます。
コンサルティングでは、ヒアリングの内容を踏まえて企業の課題を洗い出し、課題解決のために必要なAIの機能を具体的に検討していきます。それらの検討結果をもとに作成する要件定義書や仕様書がこの工程の成果物となります。
コンサルティング・要件定義にかかる費用相場は、およそ40〜200万円ほどです。なお、このフェーズは自社で行うことも可能であり、その場合は費用は発生しません。
AI化の可能性検証
開発するAIシステムの仕様が具体的に決まったら、実際の開発に入る前に、AI化の可能性検証を行います。
ここでは、AIモデルを作成するためのデータが準備できるかという点や、AIモデルが構築できる見込みがあるかという点について検証します。
特にAIモデル構築に利用するデータの確認は、この後の工程の費用にも大きく影響するため、開発に着手する前に確認することが大切です。
AI化の可能性検証の費用相場は40〜100万円程度ですが、外注先によっては費用がかからない場合もあります。
PoC・プロトタイプ作成・モックアップ開発
AI化の可能性が検証できたら、PoC(概念実証)のフェーズに入ります。PoCでは、モックアップと呼ばれるAIのプロトタイプを作成します。
実際の業務データなどを用いてAIの仮モデルの開発を行い、これまでのフェーズで検討していた機能が実現できるか、精度が要求レベルに達するかなどについて検証します。
PoC・モックアップ開発にかかる費用は100万〜数百万円程度となります。
一般的なAIモデルの場合は、開発会社側で作成済みのAIモデルをカスタマイズすることでコスト低減を図れますが、新しいAIモデルを開発する場合は費用も高くなります。
AIモデル開発(本開発)
PoCで検証が終了し、本開発の要件定義や仕様書について作成が完了されたら、AIモデルの本開発に入ります。
本開発では、プロトタイプにおける改善点を修正し、AIモデルの精度向上などのチューニングを行っていきます。
AIモデル開発にかかる費用はおよそ100万〜300万円程度が相場となります。PoCと同様に、開発するモデルの難易度などによって変動すると考えておくとよいでしょう。
システム開発
AIモデルの開発が終わったら、必要に応じてAIモデルを活用するためのシステムを開発していきます。
どのようなシステムを開発するかによって費用も変わってくるため、代表的なAIシステムの種類と費用相場について説明していきます。
AIチャットボット
AIチャットボットは、ユーザからの問い合わせなどについて、チャット形式で自動応対するシステムです。
AIチャットボットは比較的シンプルなシステムであるため、費用はそれほど高額にならないケースが多く、費用相場は50〜200万円となります。
会話のシナリオ作成を依頼したり、オペレータ対応への切り替え機能を開発したりすると、コストが増える要因となります。
画像認識・外観検査
画像や映像に映っているものを判定する画像認識、商品パッケージや製品の外観に不備がないかを検査したりする外観検査も、AIによって実現される代表的なシステムです。
画像認識・外観検査では、カメラなど画像を取得するための機器や設備、およびそれらを制御するソフトウェアも必要となります。
そのため、AI以外のシステム開発にも費用がかかってくることが多く、費用相場は1000万〜2000万円ほどになります。
需要予測
過去の売上情報・季節性などの情報を用いて、商品の売上や顧客数を予測するのが需要予測です。
需要予測は、予測結果を用いてどのようなアクションをするかという所まで含めて機能化を検討します。例えば、商品の需要予測を行い発注数を決定する、という場合には、発注数の算出まで含めた開発が必要になることもあります。
需要予測システムの開発にかかる費用相場は300〜600万円ほどになります。
音声認識・議事録作成
人間の音声を認識し、内容を解析してテキストデータとして出力するのが音声認識・議事録作成のシステムです。
音声認識・議事録作成はコールセンターの対応をはじめとして、ビジネスの場で広く使われており、開発における費用相場は数百万円〜となります。
音声の内容を認識するだけでなく、誰の音声なのかを認識したり、声の抑揚などから感情を分析したりするシステムも存在しますが、高度な音声認識機能を開発すればそれだけ費用は高くなります。
運用
AI開発が一通り完了し、実業務で使われる段階になると、システムの運用フェーズに移行します。
運用フェーズでは、システムの保守作業に加えて、AI開発の目的や目標を達成できているかを定期的に確認し、必要に応じてシステムの改善や追加開発を行うことを検討します。
システムの保守のみであれば50万円〜/月程度の費用相場となりますが、プロジェクトの規模が大きい場合や、追加開発などを行う場合はさらに費用がかかります。
AI開発にかかる費用の内訳
AI開発は何にどのくらいの費用が必要となるのか、費用の内訳について説明していきます。
人件費
AI開発にかかる費用の中で、人件費が最も多くの割合を占めます。工程ごとに見ても、コンサルティング、PoC、AIモデル開発、運用についてはほとんどが人件費となることも少なくありません。
AI開発は最低でも数ヶ月、大規模なプロジェクトでは年単位の期間を要することもあるため、期間×人数分の人件費がかかってくると考えておきましょう。
プロジェクトの規模や難易度によりますが、少なくとも数百万円、場合によっては1000万円以上の費用が人件費としてかかる可能性があります。
データ収集とアノテーション
AIを開発するにあたって必要となるのが、機械学習であり、教師あり学習、なし学習、強化学習といった手法があります。
教師あり学習の場合、教師データの量と質がAIモデルの精度に関わってくるため、質の高いデータをなるべく多く準備することが大切です。
また、データに対してタグ情報を付与するアノテーションと呼ばれる作業も必要となります。例えば画像データを使う場合、その画像に写っているものが何かという情報を付与する作業がアノテーションです。アノテーションにかかる費用の一例を挙げると、画像分類10円〜、テキスト1文章30円〜、音声の文字起こし1分250円〜などです。
教師データをあらかじめ準備できない場合は、データ収集とアノテーションの費用が必要となります。
ソフトウェアやハードウェア
AI開発において、システムを構成するソフトウェアやハードウェアに関する費用もかかってきます。
ソフトウェアのバグ修正やサーバートラブル等への対処、ハードウェアの管理や故障対応、データのバックアップ等にも費用がそれぞれ発生します。
開発するシステムの種類や規模にもよりますが、システム開発費用の5〜15%がソフトウェアやハードウェアに関する費用としてかかると考えておきましょう。
AI開発の費用が変動する要素
ここまでAI開発の費用の目安について解説してきましたが、以下に挙げるような要素によって、費用が変動してきます。
開発期間・工数
AI開発にかかる費用は、前述の通り人件費が多くの割合を占めます。人件費は、開発に要する期間によって大きく変わってくるため、効率よく開発フェーズを進められるように意識しておく必要があります。
一般的にAIは試行錯誤を繰り返して精度の高いモデルを構築していきます。トライアンドエラーの回数が増えるとそのぶん開発期間も長くなり、工数もかかってしまいます。
事前にAIモデルの実現性をよく確認し、要件を明確にしたうえで開発フェーズに入れるようにしましょう。
AIの種類や機能
開発するAIの種類や機能によって、費用は大きく変動します。
AIを活用したシステムのうち、例えばチャットボットや需要予測などは技術や手法がある程度確立されているため、既存の手法に則ることで開発費用を抑えることができます。
一方で、自動車の自動運転など手法が確立されていない新しい分野や、製品のエラー検査など固有のAIモデルを一から構築しなければならないシステムについては、費用がかさむ傾向にあります。
エンジニアのスキルレベル・人数
AI開発の費用が変動する要素として、開発に関わるエンジニアのスキルレベルと人数も影響してきます。
実装する機能の内容によって、求められるスキルレベルや人数が変わってきます。エンジニアのレベルによって、人月単価は40万円〜200万円と幅があります。
難易度の高いAIモデルを開発する際には、その分高スキルな人材が必要となります。また、開発規模が大きいプロジェクトでは多くのエンジニアが参画するため、そのぶん費用が高くなります。
AI開発の費用で失敗しないための注意点やポイント
AI開発の費用で失敗しないために押さえておくべき注意点やポイントについて、以下に解説していきます。
課題や目的を明確にする
AI開発の費用で失敗しないためには、AIで解決したい課題や開発の目的を明確にしておくことが大切です。課題や目的が漠然としたままAI開発に着手してしまうと、開発工程が進む中で手戻りが発生して追加の費用がかかったり、プロジェクトを中断せざるを得なくなり、それまでかけた費用が無駄になってしまったりする可能性もあります。
AIは魔法の道具ではなく、課題解決の手段のひとつです。あらかじめ自社の課題や目的を明確にしたうえで、どのようなAIを開発したいのかを開発会社に具体的に相談できるようにしておきましょう。
必要なコスト・予算を算定する
AI開発に多額の費用をかければ、そのぶん高精度なAIを開発することができます。
しかし、コストに見合う効果が得られなければ、プロジェクトとして成功とはいえません。
AIを開発することでどのような価値が創造できるのか、あるいはコストカットが実現するのかという点について検討し、予算を算定しておくことが重要です。
予算を事前に決めておくことで、ヒアリングやコンサルティングの段階でスムーズに機能の取捨選択ができるようになります。
複数の会社に見積もりを依頼する
自社の求めるAIがどのくらいの費用相場で開発できるものなのかを把握するために、複数の会社に見積もりを依頼することもポイントです。
同じ機能のAIを開発する場合でも、開発会社によって料金体系や対応範囲などが異なることもあるため、各社の見積もりを比較しましょう。
見積もりの内容が相場と比べて高い・低い点などあれば、事前に確認しておくことで認識相違などによるトラブルも防ぐことができます。
システム開発会社の強みや実績を確認する
AIシステムの開発会社は、それぞれ強みのある分野が異なります。
金融や製造など、どのような業界に強みがあるのか、音声認識や画像解析など、どの分野の技術が得意なのかをよく確認しましょう。
また、開発会社のこれまでの実績も、自社の要件に合ったAI開発を依頼できる会社なのかを見極める材料となります。
システム開発会社に丸投げしない
自社にAI開発の知見がなかったとしても、システム開発会社に全ての工程を丸投げすることは避けましょう。
どのようなAIが必要なのかを最も理解しているのは発注元です。自社の業務にフィットするAIを開発するために、必要な機能や仕様などについて、積極的に開発会社とコミュニケーションを取りましょう。
また、開発のフェーズに入っても、こまめに進捗を確認し、途中のアウトプットに対して意見やアイディアを出していく姿勢が大切です。
AI開発の費用を抑えるには
AI開発に多額の費用がかけられないというケースは往々にしてあります。ここでは、AI開発の費用を抑える方法について紹介していきます。
アジャイル開発で進める
AI開発の費用を抑えるために、アジャイル型でシステムを開発するという方法があります。
アジャイル型の開発とは、計画→設計→実装→テストというサイクルを繰り返してシステムを開発していく手法です。
アジャイル開発は、最初に必要最低限の機能を開発し、システムを試用しながら追加の開発を繰り返していくため、修正や仕様変更による手戻りを最小限に抑えることができます。そのため、費用を抑えてスモールスタートすることができる点がメリットです。
SaaSを導入する
SaaSとは、インターネットを介して利用する、特定の機能をもつソフトウェアのことです。AIのニーズの高まりを受け、昨今では管理業務や事務作業向けのサービスをはじめ、多くの分野でAIを搭載したものが存在します。
SaaSを導入することで、新たにAI開発を行う必要がなくなり、費用を抑えることができます。ただし、SaaSでは基本的に既存のAIモデルを利用することになるため、独自のAIモデルを開発したいというケースには適さないことが多いです。
補助金を活用する
AI開発の費用を抑えるために、補助金制度を利用するというのもひとつの方法です。
AI開発に利用できる補助金制度は複数存在します。例えば、生産性向上・生産プロセス改善などを目的としたサービス開発を支援する「ものづくり補助金」や、自社の課題解決を目的としたITツール導入費を一部補助する「IT導入補助金」などです。
上記の制度はいずれも中小企業や小規模事業者が対象となりますが、自社で利用できる補助金制度がないか調べてみるとよいでしょう。
【業界別】AIの導入事例を紹介
AIは日々新しい分野に取り入れられ、企業のビジネス成長や変革に寄与しています。ここでは、業界別のAI導入事例を紹介していきます。
製造
製造業界では、製品の検査、生産管理、工場の環境制御、機器の異常検知・予知保全などの業務について、AIが活用されています。
製造業界におけるAI導入事例を3つ紹介します。
1つ目は、化学プラントの環境の自動制御システムです。気温や天気などの影響を受けやすい化学プラントでは、これまで熟練の作業員が環境制御用のバルブを調整していました。
この作業について、複数の機器情報をもとに、環境制御用のバルブをAIによって自動調整するシステムを導入することで、人員コストの削減と作業の属人化の解消ができました。
2つ目は、金属部品メーカーにおける外観検査システムです。この企業では、製品の精密な撮影環境を整備することにより、AIによる高度な画像解析ができるシステムを導入しました。
その結果、人間が拡大鏡を用いてもわからないバリ(出っ張りやトゲ)までAIで検出することができ、高い精度の検品作業が実現できるようになりました。
3つ目は、化学メーカーにおける異常検知システムの実現です。ある化学メーカーでは、AIの画像解析技術により、人、機器、材料を監視するシステムを導入しました。
このシステムによって、標準作業手順からの逸脱や、機器の異常を自動で検知することが可能となり、ミスや異常事態の未然防止が可能となりました。
金融
金融業界では、事務作業の効率化、不正検知、融資における信用評価、窓口対応のデジタル化、株価予測などの分野でAIの活用が進んでいます。
金融業界におけるAI導入事例を3つ紹介します。
1つ目は、不正取引の検知システムです。ある銀行では、特殊詐欺やマネーロンダリングなどの不正な取引を、行員が銀行口座の履歴などを調査することによって発見していました。
この調査にAIを導入することによって、不正取引が発生している可能性がある口座を大幅に絞ることができ、調査にかかる行員の稼働を削減することができました。
2つ目は、中小企業を対象としたビジネスローンの審査システムです。このシステムを導入した銀行では、これまでローンの申込手続きから審査の回答までに時間がかかってしまうことが課題でした。
そこで、企業の口座情報などから融資の可否が判断できるAIシステムを導入しました。結果、審査における決算書の提出などの手続きも不要になり、審査時間を大幅に削減できました。
3つ目は、デジタル仮想空間における銀行窓口業務の実現です。ある銀行では、AIの技術を活用し、デジタルツイン(現実世界をデジタル仮想空間でシミュレーションする技術)による窓口業務の提供を開始しました。
このシステムによって、スマートフォン上で口座解説や金融商品の相談が可能となり、実店舗に行かなくても各種サービスが受けられるようになりました。
不動産
不動産業界では、業務効率化、不動産の相場価格算出、物件のマッチングなどについてAIの導入が進んでいます。
不動産業界のAI導入事例を3つ紹介します。
1つ目は、マンションの価格査定システムです。マンションの適正価格を算出するためには、過去の売買事例を調査する必要がありますが、その作業は社員にとって負荷が大きいことが課題でした。
そこで、ある不動産会社では、過去の売買情報をもとに、AIによってマンションの適正価格を自動で算出するサービスを導入し、価格査定における業務負荷を改善しました。
2つ目は、投資用不動産のマッチングシステムです。ある不動産会社では、不動産投資のニーズが多様化する中で、お客様の要件に沿った物件をスピーディに紹介したいという課題がありました。
そこで、AIに過去の取引情報や営業担当の経験値などを学習させ、顧客ごとに物件を選定するシステムを導入しました。このシステムによって、営業担当の物件紹介における稼働が削減され、その他の業務に注力できるようになりました。
3つ目は、エリアの混雑状況をもとにした商圏分析です。オフィスビルを運用するある不動産会社では、エリア内の混雑情報や訪問者の属性、滞留時間などをAIカメラによって監視・分析しています。
このシステムから得られた情報は、エリア内の店舗の最適な営業時間の算出に使われるなど、物件に新たな価値を付加する取り組みに活かされています。
医療
医療業界では、データ入力や電子カルテ管理などの業務効率化、画像診断、診察支援、ゲノム解析などの分野でAIが活用されています。
医療業界におけるAI導入事例を3つ紹介します。
1つ目は、内視鏡画像の診断支援システムです。内視鏡による胃や大腸のがんの見落としは、2割以上発生していると言われています。
この問題に対し、内視鏡診断にAIの画像解析技術を活用して、がんの可能性のある部分を自動で発見するシステムの開発が進められています。内視鏡画像の自動診断によって、検査の精度を向上させることが期待されています。
2つ目は、糖尿病患者の治療薬を選択するシステムです。糖尿病の患者は、合併症を防ぐために、患者によって複数の治療薬を組み合わせて治療を行う必要があります。しかし、糖尿病の症例はさまざまで、医師の知見のみで最適な治療薬を選択することが難しい場合もありました。
そこで、ある開発会社はAIによって治療薬の効果予測を行うシステムを開発し、患者ひとりひとりに合わせた治療薬選択のサポートを可能にしました。
3つ目は、患者の会話データをもとにした認知症・うつ病診断のシステムです。これまで認知症やうつ病の診断は、医師の判断に頼りがちでした。
この問題に対して、ある開発会社によって患者との会話データをもとにしたAIによる診断支援システムが開発され、客観性のある診断支援が可能となりました。
自動車
自動車業界では、自動運転をはじめ、製品の検査、故障診断、生産計画の最適化などの分野や、中古車の査定にもAIが活用されています。
自動車業界のAI導入事例を3つ紹介します。
1つ目は、自動車の自動運転です。AIによる自動運転システムは各社で開発が進められていますが、一部地域では公道での自動運転の実証実験が進められています。
一例として、慢性的なバスの運転手不足に陥っている北九州市では、一部区間で自動運転バスの実証運行を行いました。将来の実用化に向けて、継続して実証運行が行われる予定です。
2つ目は、工場における自動車部品の検査システムです。ある自動車メーカーでは、これまで目視で行っていた自動車部品の金属板の検査について、AIにより傷や割れ目を自動で発見するシステムを導入しました。
このシステムによって、正確性の高い検査と、大幅な人件費の削減の両方を実現することができました。
3つ目は、中古車の画像査定を行うシステムです。中古車販売会社における車両の買取価格査定の作業は、経験と知識が必要とされる難しい作業です。
そこで、ある中古車販売会社では、AIの画像解析技術を利用することで車種・メーカを自動で判定し、中古車の市場価格や状態を考慮した価格情報を自動で抽出することを可能にしました。
建設
建設業界では、現場監視、資材管理、プロジェクト計画策定、設計支援などの業務においてAIの導入が進んでいます。
建設業界のAI導入事例を3つ紹介します。
1つ目は、ドローンを利用した建設現場の監視システムです。このシステムでは、AIを搭載したドローンによって、建設中の現場の状況をリアルタイムにチェックすることができます。
このシステムによって安全性確認や資材の窃盗防止のための監視なども行うことができ、現場の人員配置の効率化が実現できました。
2つ目は、建築物の設計支援システムです。従来、建築物の構造設計は、さまざまな条件を満たすために柱や梁などの部材情報を調整して計算を繰り返す必要があり、多大な時間を要していました。
そこである建築会社では、適切な構造計算をサポートするためのAIシステムを導入しました。結果、計算時間を約半分に短縮、設計資料の作成期間も短くすることに成功しました。
3つ目は、建築物の外壁タイルのチェックシステムです。外壁タイルは、竣工後10年目にタイルの浮きや欠けのチェックを行うことが法律で定められています。しかし、足場を組んで人がタイルをひとつひとつ確認する方法は、手間も時間もかかることが課題でした。
そこで、ある開発会社によって、ドローンによってタイルの赤外線調査を行い、補修が必要となるタイルを自動で判定するAIシステムが開発されました。このシステムによって、調査・報告にかかる時間を大幅に短縮できるだけでなく、判定精度の向上も実現できました。
物流
物流業界では、物流予測による配送計画・人員配置の最適化、倉庫業務や検品作業の効率化などについてAIの活用が進んでいます。
物流業界のAI導入事例を3つ紹介します。
1つ目は、配送ルート最適化システムです。ある開発会社は、物流業界で課題になっていた配送ルートの最適化をAIによってシステム化しました。
このシステムでは、具体的な走行ルートに加えて駐車場所などの情報も可視化することで、配送業務を効率化します。実際に導入した物流企業では、ドライバーの人材不足の解消や、走行時間の削減ができているそうです。
2つ目は、物流予測による人員やトラック配置の自動化システムです。全国に配送センターを持つある大手物流企業では、AIによって各配送センターの荷物量を予測し、人員配置やトラックの手配を自動化しています。
このシステムによって、人員やトラックなどの経営資源を、適切に配分することができるようになりました。
3つ目は、倉庫業務における業務効率化を実現するシステムです。ある開発会社は、倉庫の作業状況の管理機能や、ピッキング等の作業順の最適化、在庫の配置最適化などのAI機能を持つ倉庫の統合管理・最適化システムを開発しました。
このシステムによって、さまざまな倉庫業務の効率化を実現することができます。
小売
小売業界では、商品の売上予測・需要予測、アバターやロボットによる売場案内・商品紹介、商品管理、セルフレジなどにAIが活用されています。
小売業界のAI導入事例を3つ紹介します。
1つ目は、店舗における商品発注数予測システムです。あるスーパーチェーンでは、店舗の販売実績や気象情報などのデータから、店員が発注数を決めていました。
この作業について、AIで発注数を予測するシステムを導入したところ、手作業のみで発注していた時と比較して、5割以上の稼動削減に繋がりました。
2つ目は、顔認証による自動決済システムです。あるコンビニチェーンでは、店舗に設置したカメラでAIによる顔認証を行い、事前に登録されたクレジットカードで決済するシステムを実証実験店舗に導入しました。
カメラやセンサーで来店者の属性や動線などを把握し、発注や店舗レイアウトに活用する機能も今後導入予定です。
3つ目は、中国語AIチャットボットの導入です。ある家電量販店では、中国人観光客の質問に答え、商品の情報や在庫などを案内するチャットボットシステムを店舗に導入しました。
このシステムによって、店舗におけるサービス品質の向上を図ることができました。
まとめ
この記事では、AI開発の流れや費用相場、外注にあたってのポイントなどを詳しく解説してきました。
実際にAI開発を依頼するにあたって、自社に最適な外注先を探す方法にお困りの方は、エッジワークの利用がおすすめです。
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