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公開日:2024/07/30

ビッグデータの分析・活用事例10選!ビッグデータの基礎知識と合わせて解説

ビッグデータの分析・活用事例10選!ビッグデータの基礎知識と合わせて解説

近年では、大手企業を含む民間企業や全国の自治体などの行政機関において、ビッグデータを分析して活用している事例が多く見られます。ビッグデータは従来のデータベースと異なり、音声や画像、動画など詳細なデータを収集していますので、ビジネスや公共事業などに幅広く利用されているのです。

本記事では、ビッグデータの概要や3つの類型、代表的な分析・活用事例10選について詳しく解説します。ビジネスの展開や新規開拓などを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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ビッグデータとは

ビッグデータの分析・活用事例10選!ビッグデータの基礎知識と合わせて解説

ビッグデータとは、主に事業の展開や新規開拓などに用いられる膨大なデータを指します。近年では民間企業だけでなく、省庁や自治体などの行政機関でもビッグデータを分析、活用して事業や公共活動の最適化に役立てています。従来のデータベースや人間では解析しきれない膨大なデータを利用できる点から、多くの組織で活用されているのです。

またビッグデータは、以下の3つに分類されます。

  • オープンデータ
  • 産業データ
  • パーソナルデータ

それぞれ詳しく解説します。

オープンデータ

オープンデータとは国や地方公共団体が提供するデータであり、無料で利用できる特徴があります。デジタル庁によれば、オープンデータは以下のように定義されています。

  • 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
  • 機械判読に適したもの
  • 無償で利用できるもの

オープンデータは情報量が多く、ビッグデータの中でも先行しているため、事業で活用しやすいです。

産業データ

産業データとは、主に工場や農業などの分野で活用されるビッグデータです。M2Mデータと暗黙知であるノウハウをデジタル化・構造化したデータに分けられます。

M2M(Machine to Machine)データとは、機器や設備などの機械が互いに情報をやり取りすることで蓄積されたデータです。主に生産工場に配置されたIoT機器や公共設備に設置された観測用のIoT機器などを通じて収集されるデータを指し、収集・分析することで生産性の向上やより正確なデータ収集に役立てています。

またビッグデータで活用される暗黙知とは、現場の人間が長年の経験から蓄積したノウハウであり、そのような実践的な内容が対象となっています。主に農業やインフラ整備など人間が長く携わってきており、機械による管理が難しい分野におけるデータをデジタル化・構造化しています。

このように暗黙知であるノウハウをデジタル化・構造化したデータは、人間が蓄積してきた知識をデータ化していることから「知のデジタル化」と呼ばれています。

パーソナルデータ

パーソナルデータとは、個人の購買や行動などに関する履歴や属性情報を指します。個人情報と類似していますが、個人が特定できないレベルの情報でも事業やビジネスの活用などに利用できる場合にはパーソナルデータに含まれます。

ビッグデータの分析・活用事例10選

ビッグデータの分析・活用事例10選!ビッグデータの基礎知識と合わせて解説

ビッグデータは民間企業や県・市などの行政など幅広く活用されています。そこで、代表的なビッグデータの分析・活用事例10選をご紹介します。

  • 株式会社竹中工務店:土地選定や土地評価の大幅な業務の軽減と効率化
  • 東芝データ株式会社:グルテンフリー食品の市場分析
  • 株式会社Agoop:災害のリスク軽減
  • 株式会社CINC:Instagramの投稿案生成機能を追加
  • BRANU株式会社:経営予測や施策立案の自動化を提供
  • 株式会社ローソン:店舗内での行動を分析
  • 株式会社すかいらーくホールディングス:想定客層のリサーチ
  • オムロン株式会社:生産性30%改善
  • 鳥取県:鳥取砂丘周辺の渋滞対策
  • 愛知県名古屋市:熱中症の事前予測

それぞれの活用事例について詳しく解説します。

株式会社竹中工務店:土地選定や土地評価の大幅な業務の軽減と効率化

竹中工務店は、自社が蓄積してきた土地や建物に関するデータとオープンデータを統合することで、土地の適切な評価や活用方法を検討する「GISCOVERY」を開発しました。このプラットフォームによって土地の利用可能性を判断し、顧客の事業計画推進をサポートしています。

具体的な仕組みとしては、土地の用途地域や公示地価といった一般的なデータに駅やバス停などの移動の主要箇所からの距離や周辺道路の人の流れなどを重ね合わせています。そこに敷地の面積や形状で絞り込んで、事業計画に最適な候補地を提案しているのです。

また蓄積したデータなどを2Dまたは3Dマップで可視化することで、より適切な分析や評価を実現しています。従来では土地の評価作業や選定は実際に現地に行って調べる必要がありましたが、これらの業務をスムーズかつスピーディーに済ませられるようになりましたので、効率化に役立っています。

出典元:600種類以上のGISデータを活用し、お客様の事業計画を迅速かつ正確にサポート

東芝データ株式会社:グルテンフリー食品の市場分析

東芝データ株式会社は、電子レシートサービス「スマートレシート」から収集された購買に関するビッグデータから、株式会社ZENB JAPANと共同してグルテンフリー食品の市場を分析しました。その結果から顧客の購買パターンとグルテンフリー食品市場との関係を明確にすることに成功し、グルテンフリー食品の市場規模の拡大を目指しています。

また本調査で抽出された購買パターンやそれらの購買パターンが共通する類似食品のデータを利用して、将来的に発展するグルテンフリー食品の市場予測などさまざまな活用方法を検討しています。

出典元:ZENBと共同で購買ビッグデータに基づくグルテンフリー食品の市場分析を実施~AI技術を活用して消費者の購買特性と潜在市場のつながりを明らかに~

株式会社Agoop:災害のリスク軽減

ソフトバンクのグループ会社である株式会社Agoopは、災害対策DXの一環としてビッグデータを活用した「避難行動分析」「異常検知AI」の実証実験を行っています。「避難行動分析」とは、避難者の位置情報データをリアルタイムで収集して避難状況を把握するシステムです。

また「異常検知AI」とは、災害などの異常事態を自動検知するAIであり、平常時と異常事態における人の流れに関するデータをそれぞれ比較することで発生地点を導き出します。

従来の災害対策では、災害の種類や発生地点などを考慮していない画一的な対応や避難所へのルートの安全性が確認できない点などが問題視されていましたが、そのような課題を解決して災害リスクを軽減するために避難時における人の流れに関するデータやシミュレーションデータを組み合わせてビッグデータを活用しているのです。

出典元:平常時の人流データを防災に生かす。ビッグデータとAIを活用した実践的避難訓練

株式会社CINC:Instagramの投稿案生成機能を追加

株式会社CINCはマーケティングツールやコンサルティングサービスを提供する企業であり、ビッグデータの活用を強みとしています。コンサルティングサービスの品質向上の目的から、社内で開発・利用している生成AIを活用したビッグデータのアナリティクスツールにInstagramの投稿案を生成する機能を追加したのです。

近年では、多様化する消費者の趣味やライフスタイルからトレンドの変化が激しくなっています。そのため、Instagramを含むSNSを利用したマーケティングに課題を抱える企業が増加しているのです。

また、生成AIが広く使われるようになって技術も進歩していることから、生成AI技術を積極的に取り入れて複雑化するマーケティング対応するための研究を行っています。

このような背景から、生成AIを活用したInstagramの投稿案を生成する「AI投稿案生成機能」を追加したのです。この機能は、調査対象の中でも高い評価を得ている投稿やユーザーの傾向を分析して、投稿案を作成するようになっています。常に最新の情報を取得しているため、アルゴリズムに左右されずに使用した時点で評価されやすい投稿案を作成することが可能となっています。

加えて、Instagrtamだけに留まらず、XやTikTokなども対象にトピックやトレンドを調べる「全プラットフォーム調査」機能やソーシャルメディアプラットフォームの投稿内容を分析してマーケティングに活用する「ソーシャルリスニング」機能も追加する予定です。

出典元:生成AIを活用したビッグデータアナリティクスツール にInstagramの投稿案生成機能を追加

BRANU株式会社:経営予測や施策立案の自動化を提供

『建設業界をテクノロジーでアップデートする』を経営理念として掲げるBRANU株式会社は、建設業経営をサポートするAI「BRANU BRAIN」プロジェクトを2024年6月24日に開始しました。本プロジェクトでは、5,000社以上の建設業の中小企業が保有するビッグデータをシステムに活用しているのです。

建設業は従来計画的な経営計画の立案や実行が難しい業界と言われています。なぜなら、業務の仕組みから納品による報酬受け取りよりも材料費や職人への給料を先払いする必要があることから、キャッシュフローが安定しにくいのです。

また工期の遅延などの予定外の事態が起こるケースも珍しくないため、この点も課題になっていました。

BRANU株式会社はこの根本的な課題を解決するために、建設業の中小企業が保有するデータを統合して経営改善を自動化するプロジェクトを開始したのです。「BRANU BRAIN」では5,000社以上のデータを集約し、企業群として不足情報を補完し合うスケールメリットを活かすことで、高精度のAIモデルを構築しています。

このAIを利用すれば、工事の受注から完成まで全体的に管理する経営予測や画像認識によって現場で起きうるトラブルを事前に予測する施行立案などで役立ちます。

なお、マーケティングや採用管理でも応用が利きますので、業務内容を全体的にサポートできるシステムとなっている点が魅力です。

出典元:建設業の経営をサポートするAI「BRANU BRAIN」プロジェクトを開始

株式会社ローソン:店舗内での行動を分析

株式会社ローソンは、それぞれの店舗に合ったベストな売り方を分析するために、日本マイクロソフトと共同して2021年11月から2022年3月の期間において、神奈川県内の4店舗を対象としてカメラや音声データ、店舗運営支援AIを活用した実証実験を行いました。従来では売上データや会員カードのデータをメインにマーケティングを行っていましたが、本実験では売場の通過人数や滞留時間、商品の購入率など店舗内の行動も合わせて分析しました。

この分析結果データをもとに店舗の売り場の改善を行い、顧客が利用しやすいように役立てています。また店舗運営支援AIを全国のローソン店舗に拡大することを目指しています。

出典元:ローソンと日本マイクロソフト、AIやデータを活用した店舗のデジタルトランスフォーメーションにおいて協業

株式会社すかいらーくホールディングス:想定客層のリサーチ

株式会社すかいらーくホールディングスは、その多様な業態から全国各地のニーズに合った店舗を出店しています。主に外食産業を展開しており、その中でもガストやバーミヤンなどが主力ブランドとなっています。

出店を検討する際にはすでに存在する数多くの店舗から収集したビッグデータをもとに想定客層をリサーチして、ベストな業態の店舗を選定しています。この分析結果による全国の出店余地は1,000店以上ありますので、その中でもより期待値が高い場所から出店計画を進めているのです。

「何人で利用するケースが多いのか」「来店する理由は何なのか」「時間帯ごとの客数」など詳細なデータを収集して分析を行い、想定客層のリサーチだけでなく、新規店舗の席数や配置、動線などにも役立てています。

出典元:進化したすかいらーくが挑む 新しい時代の“出店数拡大”

オムロン株式会社:生産性30%改善

オムロン草津工場では、国内の製造業を発展させるための方法の一つとしてビッグデータの活用に注目しました。製造業の中でもオムロンのように工場を構えている企業の場合には、設備に数多くのセンサが使われているため、装置の制御だけでなく業務の改善に使えないかと検討してその活用方法に注目しました。

ビッグデータの収集や分析をはじめた結果、現場の稼働状態と設備の状態が可視化できるようになり、製品が作られている状況や設備の様子が詳細に確認できるようになりました。実際に生産性30%改善したことから、明らかに効果が出ています。

また解決すべき課題を見つけやすくなり、現場の人間による主観的な報告ではなくデータから客観的に正確性の高い改善点が発見できるようになったのです。当初は生産性の向上が主な目的でしたが、さまざまな活用方法を考えた結果業務の改善や品質アップにも成功しています。将来的には、設備の保全にも応用することも検討しています。

現場でもさまざまなトラブルの関連性が把握できるようになったり、PDCAサイクルを回せるようになったりして働きやすさの向上にもつながっています。

出典元:製造現場でのビッグデータ活用

鳥取県:鳥取砂丘周辺の渋滞対策

鳥取砂丘は人がにぎわう観光地ですが、道路の道が少ないことや駐車場不足から長年観光客の渋滞に悩まされてきました。そこで鳥取県庁はGEOTRAの人流ビッグデータを活用した渋滞対策に乗り出したのです。

鳥取県が持つトラフィックカウンターによる車両の通過状況とGEOTRAが保有する携帯電話のGPSデータを合わせることで、精度の高いビッグデータの活用に成功しました。2023年3月で検証段階を終えて、2024年のゴールデンウィークなどで活用されています。

また将来的には渋滞予測だけでなく、交通全体の分析も検討されています。

出典元:鳥取砂丘周辺の渋滞対策に GEOTRAの人流ビッグデータを活用

愛知県名古屋市:熱中症の事前予測

愛知県名古屋市では、熱中症リスクを事前予測するために名古屋工業大学と名古屋市消防局が共同してビッグデータを活用した研究を行っています。消防局が保有する子どもの救急搬送のデータをもとに、気象データなどを合わせて熱中症リスクを予測しているのです。

名古屋市では1週間というかなり先の期間まで予測できることから、教育現場でも導入が進められています。実際に2023年7月には、熱中症リスクが高いと予測される日には体育の授業を中止するように教育委員会が事前に周知して事例もあります。

2024年6月20日時点では、熱中症リスクの予測データを名古屋市内の小中学校など562校に提供しており、子どもの熱中症予防に役立てられています。

出典元:ビッグデータで熱中症予測 名古屋市消防局、過去のデータや搬送数もとに独自の取り組み

まとめ

ビックデータには民間企業や行政機関においてさまざまな活用事例がありますが、自社に導入する場合には事前にどうやって利用できるか検討しておく必要があります。従来のデータベースと比べて量が膨大であるだけでなく、利用方法もより複雑となっていますので、専門家に相談することをおすすめします。

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