BIツールの導入は、企業がデータを最大限に活用し、意思決定や業務効率を高めるのに役立ちます。BIツールは、データの集約・分析・可視化を行うことで、経営や営業、マーケティング活動に大きく貢献しますが、正しく導入しなければその効果が十分に発揮できません。
本記事では、BIツールの主な機能をはじめ、導入までの流れやメリット、導入時に失敗しないためのポイントについて解説します。BIツールを効果的に導入し、データを活用したビジネス環境を実現させましょう。
BIツールとは
BIツールとは、企業の内外にある膨大なデータを分析・可視化し、経営や業務に活かすためのソフトウェアです。BIはビジネスインテリジェンスの略称で、データに基づく意思決定を支援するためのプロセスや手法を指します。
従来、経営判断は経験や勘に依存する場合も少なくありませんでしたが、昨今では適切データに基づく正確な判断が求められています。BIツールを導入することで、データを統合して必要な情報が都度出力でき、迅速かつ的確な意思決定が可能になります。
BIツールの主な機能
ここでは、BIツールの主要機能を3つ紹介します。
- データを収集・蓄積・統合する
- データを集計・分析する
- データを可視化する
データを収集・蓄積・統合する
企業は通常、さまざまな部門やシステムからデータを生成しますが、これらは異なる形式や場所に分散していることが多く、効率的な活用が困難です。
例えば、営業部門がCRMとSFAを利用していた場合、顧客データや売上データをマーケティング部門や経理部門などの他部門が直接参照することはできません。一方、BIツールは、これらのデータを自動的に収集し、一元管理できるように蓄積します。
また、異なるデータソースを統合することで、データの整合性を保ちながら全体像を把握することも可能です。顧客データと売上データを組み合わせれば顧客ごとの購買傾向が分析可能であり、在庫データと販売データを組み合わせれば、販売予測を踏まえた在庫管理を行う余地があります。
これにより、企業はデータの一貫性と信頼性を確保し、迅速な意思決定に役立てることができます。BIツールでデータの統合を行うことで、組織全体でのデータ活用を促進し、業務の効率化やコスト削減にも貢献します。
データを集計・分析する
BIツールは、収集・統合されたデータをもとにさまざまな角度から集計・分析を行います。
例えば、売上データを地域や期間に分けて集計したり、顧客データから購買パターンを分析したりすることで、以下などの情報が得られます。
- 季節ごとの売上傾向
- 特定地域ごとの売上成績
- 曜日や時間帯別の売上可視化
これにより、企業は経験や勘だけに頼るのではなく、データに基づいた確かな情報をもとにしてターゲットに特化したプロモーションの実施など、今後のビジネス戦略や意思決定に反映させることができます。Excelなどを用いて手作業でデータ集計・分析を行うよりも大量のデータをもとに確実かつ効率的に必要な情報が得られます。
データを可視化する
BIツールの強力な機能の一つが、データの可視化です。大量のデータが蓄積されても、それを効果的に活用するためには、視覚的に理解しやすい形式に変換することが重要です。BIツールには、収集・分析されたデータをグラフ、チャート、ダッシュボードなどの視覚的要素に変換し、直感的に理解しやすい形で出力する機能があります。担当者が報告書の作成工数に時間をかける必要はありません。
複雑なデータを多角的な切り口で分析して表やグラフを用いて直観的に理解しやすくまとめると、経営層や他部門と素早く情報共有できるようになります。このことは、トレンドや異常な値動きなど迅速な対応が求められる状況に大きく役立ちます。
また、データを分析する工数が大幅に削減できれば、リアルタイムな分析結果を参照したり、分析する内容を増やしたりすることにもつながります。BIツールを活用して現状や将来のトレンドを素早く伝えられるようになれば、経営者や関連部門がデータに基づいた意思決定を行うデータドリブン経営が実践できるようになります。
BIツールを導入する流れ
BIツールの導入は、段階を踏んで行うと後戻りを減らしスムーズな導入につながります。以下のようなこれらを計画的に進めることで、導入の成功と効果的な活用が期待できます。
- 導入の目的を設定する
- 推進チームを作成する
- BIツールを選定する
- データを準備する
- ダッシュボードを作成する
導入の目的を設定する
BIツールを導入する際は、単にデータを可視化するだけではなく、以下のように誰が何を達成したいのかの目標を具体的に設定することが重要です。
- 小売業:全国にある各店舗の在庫状況をリアルタイムに把握して、需要に応じた在庫補充や売れ筋商品の配置、在庫過剰や欠品の予防につなげたい
- 製造業:各生産ラインの稼働状況や不良品率をもとに問題箇所を特定し、生産計画の変更や機器メンテナンスのタイミング調整を行いたい
- 人事部門:従業員の勤怠や生産性データから生産性の高い部署やトレーニングが必要な従業員の抽出を行い、適切な人事戦略に役立てたい
このほか、売上の増加やコスト削減、顧客満足度の向上など、企業の課題や目標はさまざまです。目標を明確にすることで、ツールの選定基準の明確化や運用効率の向上につながります。
推進チームを作成する
BIツールの導入には、社内の専門知識と各部門の連携が欠かせません。推進チームを構築する際は、スムーズな導入を図るために構築側だけではなく利用者側を含めることが重要です。
- 決裁者:経営層の代表者。導入の承認、社内への啓蒙を担当
- 推進責任者:IT部門のリーダーなど。導入プロジェクトを主導、全体の監督を担当
- 構築担当者:IT部門の技術者。データ統合やダッシュボード作成を担当
- 利用者側推進リーダー:各部門のデータ管理者。利用者の意見を集約し、構築側と連携を担当
- 利用者:BIツールを活用、フィードバックを提供
推進チームは、BIツールの選定から導入、運用のほか、各部門間のコミュニケーションを円滑に進める役割を担います。また、導入後もBIツールの効果検証を行い、必要に応じて改善を図ることが重要です。チームの役割分担を明確にすることで、導入の成功率が高まり、効果的な運用にもつながります。
BIツールを選定する
BIツールは、多岐にわたる機能を持つため、自社のニーズに最適なツールを選定することが求められます。BIツールは、導入目標をもとに推進チーム全体で選定します。
- オンプレミス型/クラウド型
- 自社の業種や導入目的にあう機能があるか
- 自社で扱うデータの種類に対応しているか
- 外部サービスや既存システムと連携可能か
- 導入費用は予算内か
- 必要なサポート体制が整っているか
適切なツール選定が、BIツールの効果的な活用につながります。
データを準備する
BIツールを導入する前に、データの準備が必要です。各部門から必要なデータを集め、一元的に管理するためのデータ基盤を整備します。
- データクレンジング:不正確なデータの修正や削除
- データマイグレーション:データをBIツールに移行、統合
- 部門間の連携とデータ提供体制の整備
- 必要なデータの確保:チーム全体で対応、紙媒体のデジタル化
質の高いデータが揃っていないと、BIツールの分析結果が信頼できないものになりかねません。また、今後の運用を見据え、データ更新のルールや体制を整えることも重要です。
ダッシュボードを作成する
BIツールの最終段階として、ダッシュボードの作成があります。ダッシュボードとは、画面上で分析結果を表示する場所のことです。
例えば、リアルタイムで売上や在庫状況を確認できるようにすることで、迅速な意思決定を支援します。ダッシュボードの設計には、ユーザーのニーズを反映させ、すぐに必要な情報がわかるように工夫することが重要です。経営者や担当者が必要なデータを視覚的に把握できるように、グラフや表などを活用して使いやすく設計することが求められます。
もし外部にダッシュボード作成を依頼する場合には、仮のダッシュボードを作成したうえで目的にあったものが作成できているか確かめて適宜修正を行いましょう。
BIツールを導入するメリット
BIツールは高度な知識やスキルがなくても必要なデータの抽出や分析ができるため、導入するとさまざまなメリットが得られます。それぞれについて詳しくみていきましょう。
- データ収集や分析にかかる時間を削減できる
- データの可視化により状況を把握しやすくなる
- 迅速で正確な意思決定が可能になる
データ収集や分析にかかる時間を削減できる
BIツールは、データの収集から分析までを自動化することで、これまで手作業で行っていた時間のかかるプロセスを大幅に短縮します。Excelなどを活用してもある程度の分析は可能ですが、データの選定や入力などを全て担当者が行わなければなりません。
一方BIツールを活用すると素早く迅速な意思決定を行うための準備が整います。また、定型業務の効率化により、従業員がより戦略的な業務に集中できるようになるため、業務全体の生産性が向上します。
データの可視化により状況を把握しやすくなる
BIツールは、収集されたデータをグラフやチャートなどの視覚的な形式で表示する機能を備えています。これにより、企業の経営層や担当者はデータを一目で理解しやすくなり、状況の把握がスムーズに行えます。
BIツールは、レポート出力のほか、時間、地域、製品カテゴリーの分析、データマイニングなどさまざな分析に対応しています。それらを組み合わせることで新たな発見やより確からしい予測が可能です。
迅速で正確な意思決定が可能になる
BIツールを活用することで、企業は最新のデータに基づいた迅速かつ正確な意思決定を行うことができます。膨大なデータからリアルタイムで必要なデータが得られるため、経営状況や市場の変化に即応し、適切な戦略を策定できます。
問題点や改善点が早期に発見できるため、迅速な対応や戦略の策定が可能です。経営の意思決定プロセスが強化できれば、競争力を維持し、ビジネスの成長が促せます。
BIツールの導入を失敗しないポイント
BIツールは経営や営業、マーケティング活動、そしてデータ分析といった多様な分野で活用できるため、導入時に失敗しないためのポイントを押さえることが重要です。BIツールの導入で失敗しないためには、次の3つの観点から準備を整えることが必要です。
- 分析に必要なデータを明確にする
- ツールに必要な機能や環境があるかを確認する
- データ同士の連携ができるかを確認する
分析に必要なデータを明確にする
BIツールを導入する際は、解決すべき課題の明確化が重要です。自社のニーズに合ったツールの選定に役立つだけでなく、導入後の効果確認の指標としても必須です。そのうえで分析に必要なデータを明確にし、そのデータが企業のビジネス目標にどのように貢献するかを確認しましょう。
ツールに必要な機能や環境があるかを確認する
BIツールを選定する際には、企業の特定の業務ニーズに応じた機能が備わっているかを確認することが重要です。
例えば、データの可視化機能やリアルタイム分析機能が必要な場合、それに対応できるツールを選ぶ必要があります。また、既存のシステムや他のソフトウェアとの連携が可能かどうかも確認しておくことが大切です。さらに、導入後のサポート体制やコスト面も含めて総合的に評価し、最適なツールを選定することが成功への鍵となります。
なお、導入は小規模な試験運用から始め、各部門間との連携や運用フローといったルールの確立を図りましょう。
データ同士の連携ができるかを確認する
既にCRMやERPなど既存システムと連携できるかや、API・オプションなどカスタマイズの余地があるかの確認も必要です。
異なるシステムや部門からデータがシームレスに連携できれば、データの整合性が保たれ、分析結果の精度が高まります。また、業務全体の効率化にも寄与し、導入の効果を最大化することができます。
また、将来的にデータや分析したい項目が増えることを考慮して、スケーラビリティがあるツールを選びましょう。
まとめ
BIツールの導入は、企業の意思決定を支援し、業務の効率化を図るための強力な手段です。導入を成功させるためには、適切なツールの選定、データの明確化、部門間の連携が欠かせません。
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