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公開日:2024/10/18

AIによる異常検知・異常検出の活用事例10選!異常検知・異常検出の概要と合わせて解説

AIによる異常検知・異常検出の活用事例10選!異常検知・異常検出の概要と合わせて解説

AIによる異常検知・異常検出システムは、製造業やIT、通信業界など様々な分野で広く活用されています。AIを導入すると、目視やしきい値で不良や異常を見分ける手法よりも高い精度で、リアルタイムに状況を判断できるメリットがあるのです。本記事では、異常検知システムの概要から具体的な活用事例までを解説し、導入におけるポイントを紹介します。AIの使用にどのような差があるのかを知り、AIの導入効果を検討してみましょう。

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異常検知・異常検出とは

AIによる異常検知・異常検出の活用事例10選!異常検知・異常検出の概要と合わせて解説

異常検知とは、大量のデータの機械学習を行って異常を識別する技術です。また、異常検出は、検知された異常が実際に問題であるかを判断するプロセスです。

監視したい場所にカメラやセンサーなどを配置して、画像や動画、温度、振動、圧力など大量のデータをAIが分析し、異常や故障の予兆を検知します。リアルタイムでモニタリングができるため、監視者が常にその場にいなくても工場や設備の生産ラインの稼働を最適化する効果が期待されています。

AIの異常検知には、変化点検出や異常部位検知、外れ値検出などがあります。これらを状況に合わせて活用することで、従来の監視システムでは気づきにくかった問題を早期に発見できるため、作業効率や確認精度の向上が図れます。

AIによる異常検知・異常検出の活用事例10選

AIによる異常検知・異常検出の活用事例10選!異常検知・異常検出の概要と合わせて解説

AIを活用した異常検知・異常検出は食品や送配電事業者、物流などさまざまな業界で活用されています。10社の活用事例を通じ、AI技術によって現場の効率化や安全性の向上がどのように実現されているかを見ていきましょう。

キユーピー株式会社:異物混入や不良品の発見精度の向上

キユーピー株式会社は、マヨネーズなどの食品製造を手がけるなかで「人にやさしい工場づくり」と「技術革新」を目指しています。食品への不良原料混入は、食品メーカーとしてひじょうに重要な問題です。しかし、従来製造時の原料に含まれる余計なものは人間が目視で確認していたため、異物をもれなく排除するには限界がありました。ここに対し、不良品の発見精度と業務効率向上を目指したのです。

具体的には、製造ラインに流れる食品を撮影した動画をオープンソースの深層学習フレームワーク「TensorFlow」でディープラーニングすることで、不良品を判断するアルゴリズムを構築したのです。これにより食品製造プロセスにおける品質向上と作業負荷軽減が実現できました。今後はさらに精度の高い検知を目指し、持続的な改善を進めています。

参考:ブレインパッド、キユーピーの食品工場における不良品の検知をディープラーニングによる画像解析で支援

中部電力パワーグリッド株式会社:ドローンによる画像取得から異常判定までを自動で実施

中部電力パワーグリッド株式会社は、もともとドローンを用いた送電設備自動点検技術を架空送電設備の保守業務に用いる「POWER GRID Check」というアプリケーションに活用していました。これにより、自動で現場の点検や撮影を高い精度で実施できるものの、取得画像の内容確認は作業員による確認が必須でした。

そのため、送電設備における異常をリアルタイムで自動検出するために、鉄塔のボルト脱落・錆など送電設備についても検出できるAIを点検アプリケーションに導入したのです。

この仕組みでは、ドローンが指定した場所を飛行して画像を取得するため、鉄塔と送電線を同時に自動点検可能です。鉄塔種別や鉄塔の色ごとに錆の状況を学習して、評価システム上の画像に結果を色で表示して異常判定を行います。今後は変電設備の保守・保全業務への展開も期待しています。

参考:株式会社センシンロボティクスと共同で「送電設備の異常を自動で検出するAI」を開発

トヨタ自動車株式会社:工場の省人化

トヨタ自動車株式会社は、少子高齢化やコロナ禍などの背景からセンサーやカメラを用いた検査工程の省力化・自動化の実現を目指していました。しかし、製品検査に機械学習を取り入れる際に、異常が起きにくい現場で異常品画像データが十分用意できないという課題がありました。

そこで、異常品画像データが少なくても製品異常を検出するAIエンジンを開発したのです。このエンジンは、大量の良品のデータを学習することで、高精度で異常を検出できる点が特徴です。また、しきい値は手動ではなく状況を考慮して自動で設定することができます。

このAIは不良の見逃しが許されない製品に適用されていて、生産ラインの稼働率向上やメンテナンスコストの削減など工場の省人化が期待されています。今後は、さらに研究を進めて画像に加えて音や波形データでの異常検知機能や、異常予知機能の開発も予定されています。

参考:調和技研の画像系AIエンジン『visee』を活用した、トヨタ自動車 衣浦工場さまとの良品学習による製品異常検出AIの共同開発に関するお知らせ

株式会社メディセオ:物流センターの長時間の機能停止の未然防止

医薬品卸の株式会社メディセオは、親会社であるメディパルの物流センター「阪神ALC」にマテハン(マテリアルハンドリング)機器の異常検知システムを導入しています。

マテハン機器は、商品を効率的に移動させるために欠かせない設備ですが、異物落下や電動モーターやギアの摩耗、異物の噛み込みによる不具合が発生する可能性があります。一度停止すると復旧には数十分や数時間程度かかり、なかには数日を要する場合もあるため、長時間業務が停滞することへの対策が求められていたのです。

そこで、振動、温度、音などを連続検知するスマートセンシングシステムを導入し、異常の予防を図る仕組みを構築しました。システムでは測定データを解析し外部へ転送して蓄積を行い、異常が検出された時点でアラートが発信できます。

参考:メディセオと神栄テクノロジーが共同開発 スマートセンシング技術を活用したマテハン機器異常検知システムをメディセオに導入

四国電力株式会社:保守業務のスマート化

四国電力株式会社は、保守業務の効率化や高度化を目指して、水力発電所に設備の異常検知を行う自律飛行型巡視ソリューションを導入しました。

水力発電所は山間部に建設することが多くみられます。従来、水力発電所の保守を行う場合は、保守員が現地に実際に行く必要があり、移動時間が大きな負担となっていたのです。

自律飛行型巡視ソリューションのシステムは、水力発電所内にドローンを設置して、情報を都度データベースで管理する構成です。ドローンは設定経路に沿って飛行や充電を自動で行い、水車・発電機周辺の写真をデータベースに保存します。また、万一異常が検知された場合には、アラートの発報が可能です。これにより、担当者は遠隔の事業所から現場の確認が行えます。

参考:水力発電所で自律飛行型巡視ソリューションを導入-ロボティクス技術で無人運用化やAIによる設備の異常検知を実現-

南海電気鉄道株式会社:安全・安定輸送の維持及び踏切の安全性向上

南海電気鉄道株式会社は、安全対策への設備投資を行っています。そのなかで、運休や30分以上の遅れが発生する件数の30%が踏切事故であることを受け、踏切事故予防を目的とした異常検知システムを開発して、各踏切に設置し始めています。

このシステムは、踏切内に人が侵入する異常を検知して踏切事故の予防を目指す目的で人の検知能力が高いAIを用い、主に人や自転車が通る人道踏切に導入しています。遮断機が下りたあとに踏切で異常を検知した際には特殊信号発行機が動作します。踏切に接近する列車の運転士が特殊信号を目視した場合、列車を停止します。

なお、この仕組みはすでに設置済みの監視カメラを利用していて、設備の導入費用が抑えられるため、最小限の投資で安全・安定輸送を目指すことが可能です。

参考:~踏切事故を防止~AIを用いた踏切異常検知システムの導入試験を開始

株式会社デンソー岩手:品質向上やお客様満足の向上

株式会社デンソー岩手は、車載メーターやハイブリッド車のパワーコントロールユニット用半導体デバイスなどの開発・製造を行っています。同社では、24時間365日・無停止運用に向けて装置の誤検知をなくす目的で、機械学習を用いた異常検知ソリューションを導入しています。

機械学習は、MT法よりも精度が高い方法を用いて正常状態のみを学習しています。異常に関係あるデータの選別や異常のリアルタイム検知などをAIが行うため、データの範囲チェックやしきい値だけでは検知できない異常を高速で検知可能です。等高線図や要因ネットワーク図、異常スコアグラフなど分析結果の可視化にも対応しているため、異常の原因にたどり着きやすく、課題解決に必要となる試行錯誤が削減できます。これにより、品質向上や顧客満足度の向上が図れます。

参考:株式会社デンソー岩手 AI技術による異常検知で安定したモノづくりを支える

サントリービール株式会社:属人的な保全業務の脱却や作業負荷の軽減

サントリービール株式会社は、AIを活用した設備の異常予兆検知システムを導入しています。

大量生産を行う製造現場では、すでにセンサーのしきい値による異常監視システムを導入していたものの、詳細なデータの変化の検知には経験やノウハウが重要だという課題がありました。この属人的な保全業務からの脱却と作業負荷の軽減を図るため新たにAIを採用したのです。

そこで最先端AI技術である「NEC Advanced Analytics – インバリアント分析」を中心に、多数のセンサーを組み合わせた監視システムを構築したのです。センサー同士の変化をもとにセンサー間の不変的な関係性(インバリアント)をモデル化しています。予測されるデータと現実でのデータとの比較を行っていつもと違う状態を検知するとともに、理由や実施すべきことの情報提供を行います。これにより異常の早期対処と熟練者のもつ技術の継承が可能になります。

参考:NEC、サントリー〈天然水のビール工場〉京都にAIを活用した異常予兆検知システムを提供

KDDI株式会社:通信障害の大規模化予防

KDDI株式会社は、2022年7月に大規模な通信障害が発生して問題になったことから、再発防止とさらなる品質の改善を目指す取り組みを進めています。そのなかで、LTEモバイルネットワークでAIを活用した障害検知システムを導入したのです。

従来障害検知は固定しきい値を使っていましたが、夜間よりも日中の通信料のほうが多いなど、利用の傾向は場合により異なるにもかかわらず、時間帯や曜日によるトラフィック量の変動に対応できないため、検知精度に課題がありました。

そこで、AIを用いた障害検知システムを採用することで、動的なしきい値設定が実施でるようにしたのです。曜日や時間帯、平日・休日などの属性を含めた変動条件を分析して柔軟に対応することで、監視データ量が6倍に増加し、障害検知の効率を大幅な向上ができるようになりました。今後もさらなるネットワーク品質の向上を目指し改善が行われます。

参考:AIを活用した障害検知システムの運用を開始

株式会社SUBARU:航空機組立における穿孔作業の自動化

株式会社SUBARUでは、自動車の製造開発のほか、航空宇宙事業も手掛けています。航空機や主翼、尾翼、中央翼などのコンポーネントを生産するなかで、穿孔作業は作業員の技量に依存する工程であり、修正が必要な場合の工数も多くかかることから自動化を目指していました。一方、推進穿孔作業における孔径に対する要求値が厳しくなり、課題になっていたのです。

そこで、人が介入せずに穿孔機の状態をリアルタイムに検知する仕組みとして、異常検知システムを構築しました。

スマートメンテナンスシステム(CBMシステム)の「SENSPIDER」はセンサーの出力結果に対応して予測を行います。既存設備へ「SENSPIDER」を追加することで、正常なドリルと欠けのあるドリルの両方を学習してパラメーターの設定ができるようになりました。

参考:株式会社SUBARU様事例:航空機組立における穿孔作業の自動化に向けた 異常検知技術開発に「SENSPIDER」を導入

まとめ

AIによる異常検知・異常検出の技術は、製造業や通信業など幅広い業界で効率化や品質向上を図る目的で活用が進んでいます。しかし自社のみでシステムを立ち上げるのは簡単ではありません。もしAIによる異常検知の導入を検討する場合は、異常検知の専門家の支援を受けるのがおすすめです。

エッジワークには実績あるプロ人材が多数在籍しています。お客様のニーズにあわせた体制でAI異常検知の活用の伴走を行うため、異常検知・異常検出AIの活用や導入に業務委託を検討している場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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