ERP(Enterprise Resource Planning)とは、販売、購入、在庫管理、会計など企業の基幹業務を一つのシステムで管理することを可能にするソリューションです。このシステムによって、企業は業務の標準化や迅速な経営判断、ガバナンスの強化などを実現できます。
しかし、ERPシステムの導入には相応の費用が必要です。導入費用は企業が直面している問題や必要とされる機能、システムの形態によって左右されますが、多くの企業では費用や高度な専門性から、導入を見送ってしまうケースも少なくありません。
ERPは自社でサーバーを管理するオンプレミス型、インターネットを通じてサービスを利用するクラウド型の2種類があります。それぞれ導入スピードや費用、カスタマイズの自由度、そして運用や保守の容易さなど異なる特徴があります。自社のニーズに最適なシステムを選ぶためには、これらの特徴や必要な費用をしっかりと理解することが重要です。
そこで本記事では、オンプレミス型とクラウド型のERPシステムの導入費用とその違いについて詳しく解説します。
目次
ERPの導入費用
企業がERPシステムの導入を検討する場合に、最も気になるのは「導入にどれほどの費用がかかるのか?」という点です。多くの企業が具体的なコストを把握できない理由から、プロジェクトの検討を躊躇してしまいます。
そこで、ERP導入に関わる費用の種類とその相場について詳しく解説します。
オンプレミス型
オンプレミス型ERPとは、企業の内部環境で完全に管理・運用されるシステムです。このシステムは、企業の自社サーバーに直接インストールされて運用され、社内ネットワークを通じてアクセスされます。
近年では、VPNなどの技術を利用して外部からもアクセス可能になるなど柔軟性が向上しており主流のタイプとなっています。そこで、オンプレミス型ERPを導入する際に考慮すべき費用について詳しく解説します。
ハードウェア費用
ハードウェアの費用相場は数10万円~数1,000万円です。
オンプレミス型ERPの導入には、ハードウェアへの初期投資が不可欠です。この費用は、企業が既に保有しているハードウェア資産の範囲と状態によって大きく変動するため、正確な見積もりが必須となります。
オンプレミス型ERPの導入に必要なハードウェア構成は、以下の通りです。
- サーバー
導入するERPシステムの規模に応じて、開発用サーバーと本番用サーバーが必要です。高性能なサーバーが求められるケースが多く、データ処理能力と速度が重要な要素となります。 - ネットワーク機器
企業内のデータ通信を安定させるためには、適切なネットワークインフラが必要です。 - ストレージ
大量のデータを安全に保存するためには、十分なストレージ容量も求められます。 - 接続機器
サーバーやネットワーク機器と端末をつなぐための接続機器も必要とされます。接続機器には、ケーブルやハブ、ポートなどが含まれます。
企業がすでに持っているハードウェアを最大限活用すれば、必要な投資額を大幅に削減できます。ただし、旧式の機器は性能不足や互換性などによって、システムの効率を低下させる可能性があるため、更新の検討も必要です。
また、大規模な投資を避けるためにはハードウェアのリースやレンタルを利用することも一つの手です。
ライセンス費用
ライセンスの費用相場は100万円~1,000万円です。
ライセンスとは、ERPシステムを正式に使用するために必要な製品であり、購入することでシステムの核となる機能が利用可能になります。オンプレミス型ERPの場合では、ライセンス費用は初期に一度だけ支払う形式が一般的です。継続的な支払いを必要とせず、初期投資後は追加のライセンス費用が発生しないため、長期的なコスト計算がしやすいというメリットがあります。
導入サポート費用
導入サポートの費用相場は1,000万円~2,000万円です。
システムの導入を支援するためには、外部のコンサルタントを雇うケースがよく見られます。例えば、導入プロジェクトの管理やカスタマイズの設計、初期設定などをサポートしてもらいます。
導入サポートに要する費用は、プロジェクトの規模や複雑性、コンサルタントの専門性によって大きく変動します。基本的なサポートだけでなく、企業が求める具体的なニーズに応じたカスタマイズが必要な場合は、その分だけ追加の費用が発生することもあります。
カスタマイズ費用
カスタマイズの費用相場は数10万円~1,000万円超です。
ERPシステムを導入する際には、自社の具体的な業務要件に合わせてシステムをカスタマイズすることが一般的です。このカスタマイズでは、システムの基本設計を変更したり新たな機能を追加したりするための費用が必要となります。
カスタマイズの内容によって費用は大きく異なり、小さな機能追加であれば数十万円から、より複雑で高度な改修が必要な場合には数百万円、場合によっては一千万円を超えることもあります。この費用は、導入するERPシステムのベースとなる機能の範囲やカスタマイズの難易度に左右されます。
トレーニング費用
トレーニングの費用相場は10万円~100万円
新しいERPシステムの導入においては、従業員がそのシステムを効率的かつ正確に操作できるようにするために適切なトレーニングが欠かせません。このトレーニングを通じて、従業員は新システムの使用方法を学んで、業務の効率化を図ることが可能となります。
トレーニングの費用は、参加する従業員の数やトレーニングの内容と持続時間、使用する教材の質によって異なりますが、これらの投資は従業員が新しいシステムを無駄なく、かつ効率的に使用するためには不可欠です。しっかりとしたトレーニングプログラムは、初期の不慣れさや操作ミスを減らし、中長期的に見ればコスト削減にもつながるため、その重要性は非常に高いといえるでしょう。
クラウド型
クラウド型ERPは、インターネットを介して提供されるサービス形態のERPです。このシステムでは、ERPソフトウェアがベンダーのクラウドサーバーにインストールされており、ユーザーはどこからでもウェブブラウザを通じてアクセスすることができます。
現在このタイプのERPは特に人気があり、多種多様なサービスが市場に提供されています。そこで、クラウド型ERPを導入する際に考慮すべき費用要素について詳しく解説します。
導入初期費用
導入初期の費用相場は、無料~10万円です。
クラウド型ERPの導入初期費用は、オンプレミス型と比較して大幅に低くなっています。クラウドERPでは物理的なハードウェアやサーバーを設置する必要がないため、その準備に関わる費用はほとんどありません。また多くのクラウドERPサービスでは基本的な導入サポートとトレーニングがオプションプランとして用意されており、必要に応じて選択することが可能です。
そのため企業は初期の投資コストを削減できるだけでなく、運用開始までの時間も短縮できるメリットがあります。一部のクラウドERPプロバイダーでは、初期導入に関するコストを完全に無料に設定している場合もあります。
ライセンス費用
ライセンスの費用相場は、1万円~100万円です。
クラウド型ERPでも、ライセンスは必要となります。システムの核となる機能全体を利用するために導入され、ライセンス費用は通常毎月定期的に支払われる形式となっています。
サブスクリプション費用
サブスクリプションの費用相場は、1ユーザーあたり数千円~数万円です。
クラウド型ERPでは、サブスクリプションモデルが一般的です。このモデルでは、ユーザーは使用するサービスに対して月額で定額の料金を支払います。サブスクリプション費用は、1ユーザーあたり数千円から数万円となっています。
この料金体系では、ユーザー数に応じたコストが明確になり、企業は使用状況に基づいて費用を管理しやすくなります。またサブスクリプション料金を採用している多くのクラウド型ERPベンダーでは、料金が変更された場合でも提供されるサービスの質が変わることはありません。
オンプレミス型とクラウド型の費用の違い
オンプレミス型とクラウド型ERPでは、導入と維持にかかる費用に確な違いが存在します。そこで、それぞれの費用の差について詳しく解説します。
オンプレミス型
オンプレミス型ERPの大きなメリットは、ランニングコストの低さです。クラウド型ERPでは、利用規模やユーザー数に応じて毎月または年間で定期的な費用が発生しますが、オンプレミス型ではそのような継続的な費用は一切必要ありません。
初期投資としては、クラウド型に比べてシステムのライセンス料や必要なハードウェア、通信設備の整備に高額が必要になるケースが多いです。
そのため導入初期の費用は高くなりがちですが、その後の運用でランニングコストがかからないため、長期的に見れば費用削減につながる可能性があります。
導入時の費用だけでなく、長期間にわたる経済的なメリットも考慮して、全体のコストを見積もることが重要です。このように総合的なコスト評価を行うことで、自社にとって最も効果的なERPシステムの選択が可能になります。
クラウド型
クラウド型ERPは、オンプレミス型に比べて導入時に必要なハードウェアが不要で、ライセンスの一括支払いも必要ありません。
そのため、導入初期のコストを大幅に削減できる点が大きな特徴です。
オンプレミス型のように物理的な設備の準備が必要ないため、導入コストが低く抑えられるだけでなく、迅速にシステムの利用を開始できます。実際、多くのクラウドERPは10万円以下で導入可能であり、導入費用が全くかからずに月額の使用料のみで利用できる製品も少なくありません。
しかし、月額利用料は継続的なコストとして蓄積されるため、長期的に見ればそれなりの出費になる点は理解しておく必要があります。特に企業の規模が拡大して利用ユーザー数が増加すると、月額費用もそれに比例して増加するため、将来の企業成長を見込んで製品やプランを検討することが重要です。
まとめ
ERPシステムは、企業の業務効率向上や業績の向上に非常に有効なツールです。
しかし、導入や運用には費用がかかり、そのコストは企業の規模や業種、求める機能によって大きく異なります。
導入を検討する際には、まず自社の状況や予算を考慮して、クラウド型のERPかオンプレミス型のERPのどちらを選択するかを決定することが重要です。また自社の具体的な課題を洗い出し、導入目的を明確にすることも大切です。
これらの準備が整ったら、気になるシステムの見積もりをとって、費用とERPがもたらすメリットを天秤にかけて、最適なシステムを選びましょう。適切な製品選びは、導入後の満足度を大きく左右します。
もしどのシステム会社に依頼すればよいか分からない場合は、エッジワークに相談することをおすすめします。エッジワークでは多様な専門家が登録しており、予算に応じた業務委託契約を締結できます。自社に最適なERPツールを導入する助けとなるでしょう。
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